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小学生になっても人前で話すことを怖がり、まして、挙手の回数で評価されるような小学一年の一学期などは、おどおどとしてめそめそとした、何か物憂げな表情をいつも浮かべた女子であった。学校に行く前には母親に「今日一日、さくらのことを応援しといてや」と、涙目で訴えなければ外に出られないほどであった。学校に行った後、「笹倉さん」と、先生に急にみんなの前で名前を呼ばれたときなどは「はい…。」と、まるで怒られたかのように半べそで返事をする有様であった。そして、小学一年の図工の時間、自分の顔を書きましょうというある日、彼女は大きな哲学的な問いにぶつかり顔を描くことができなかった。「鏡は反対の私が写ってるんやから、私は私の顔を見たことないやんか、なんで顔が描けるねん、私はほんまの私を見たことないやんか。」
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