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再び、俺の耳に嫌な音が反響していく。目の前には、鮮明な赤い血が広がっていた。
「な…んで」
「これで終わりにしよう…、RULE。私とともに死のう…。
何故お前を怒鳴るようになったかと聞いたな…。
あれは…お前が愛しかったからだよ…。おと…うと‥のように思っていた…からなんだ」
「嘘だ!!そんなはず…」
男は口から血を噴き出しながらも、顔を横に振った。じいちゃんは倒れ込むように、男に凭れかかった。
「嘘…じゃない。大切だった…からこそ…、直してほしかったからこそ…、君を…叱った…んだよ」
キラキラと徐々に消え失せていくじいちゃんの体を目の当たりにして、俺は居てもたってもいられずに、じいちゃんにすがりついた。
「じいちゃん!!死なないでっ…俺を…置いていかないでっ!
もっと、世界を教えてよっ!もっと…俺の知らないこと…教えてくれよ…」
顔を横に向け、横目で俺を見つめる。じいちゃんは、昔と変わらない優しい笑みを浮かべていた。
「真人…、もう時間なんだ。優人と再会できる…だろうか。ようやく優人に、会え…るんだね。真人、父ちゃんを…頼むよ。あいつは、…不器用な奴だから」
そう言うと、俺の方から男の方に目を向け男の頭を撫ぜる。男は、涙を流しじいちゃんに抱きついていた。
俺は、じいちゃんから距離をとるように離れた。もう、俺が介入してはいけないと思ったのだ。
「僕…間違えていた…ってこと?大切…にされていたのに…気付かずに…、AIDを恨んで…っ」
男の目から溢れるのは、紛れもない涙であった。男は今までしでかしたことに、今となって後悔の念でいっぱいになったかのように、じいちゃんにすがりつき涙を流し続けた。
「そうだよ…。だから…天国で…謝ろう…。まだ、…手遅れじゃ…ないよ」
「真…、その前…に、真、人…といった…ね。君…たちに悪い…ことを、してしま…った。
あやま…って許される、こと…じゃないのは、わか…てる。だから、祈…ろう。
この先、…未来が…光に…満ち、溢れるように」
男は、俺に初めての優しげな瞳で語りかけてすぐに、目を閉じた。じいちゃんも後を続くように息を引き取った。
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