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「俺はじいちゃんたちを失ったけど、君たちを助けることができた…」
俺はゆっくりと立ち上がり、白木さんと向かい合った。白木さんも立ち上がるが不思議そうな顔をしている。
「真人?」
「俺、不謹慎かな…。だけど、君に言われたように…、じいちゃんに助けてもらったこの命を無駄にしたくない…。
そう思うと、俺は生かされたんだ…。二人に…だから、俺はじいちゃんや優人の分まで生きていかなくちゃ駄目なんだ…」
俺は、白木さんの手を取り、握り締めた。
「そうだよ。あんたは生かされた…。その命無駄にしちゃいけないよ?」
最初驚きはしていたものの、白木さんは微笑みはにかんだ。その表情に心の穴が少し小さくなった気がした。俺は、コクリと頷いた。
「真人さん」
俺たちだけで話していると、申し訳なさそうに俺を見上げる幸助君が俺の服を引っ張っていた。
「俺、裏切ったとばかり思ってた…。だけど、助けに来てくれた。俺の所為で…おじいちゃん死んじゃった‥。ごめんなさいっ…。
ごめんなさい、真人っさ」
幸助君の目から零れおちる涙はとめどなく流れている。俺は持っていたハンカチで幸助君の涙を拭う。
「それは違うよ…、幸助君。君の所為なんかじゃない…」
俺の手を幸助君の頭に載せ撫ぜる。すると、ポカンとした表情で俺を見上げた。
「君は俺の命を助けてくれた。君が行動をとってくれなければ、多くの命が失われたんだよ。
君の所為なんかじゃない。じいちゃんは、俺と君を生かしてくれたんだよ。もっと長く生きろと…」
そう言うと、幸助君は弱弱しい表情を浮かべていたのが、自分の意思をハッキリと表情に表すように表情を変化させる。
「俺、守ってみせる!生かされたのなら、きっとまだすべきことがあるだろうから!」
俺に告げると、すぐさま白木さんの家族の所へと駆けもどっていった。白木さんは、変わらず俺の隣にいてくれた。
「さぁ、帰ろうか。俺たちの町へ」
俺たちは、自分たちの家に戻ることにした。皆の表情も喜びばかりだったものから、複雑な心境からか顔をゆがめる者も少なくなかった。
そのことから、俺は『通じた』のだと再認識した。
研究室から出れば、丁度月が夜空に浮かび上がり美しかった。雲がかかり、月が見え隠れする。
父ちゃんが、研究室に白木さんの妹を背負い待っていた。白木さん家族と妹は、再会を喜んだ。
俺は父ちゃんから、優人が死んでしまったことを聞かされる。
「優人の最期の顔な、笑っていたぞ。お前が、突き進んでしまうことが辛いと言っていたのと同時に嬉しかったと…。
これで世界は変わるんだ…とね」
父ちゃんから、優人の最期の様子が伝えられる。優人もまた、未来に期待し死んでいってしまったことに後悔は隠せない。
この日のことはたちまち、全世界に流れ俺と白木さんは一躍有名になってしまった。
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