11.ヒーロー

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それでも、学校へ行き勉強をする。日常は変わらない。ただ、人の目が俺たちに向けられることが多くなったということだけだ。 今日もまた、白木さんは屋上で授業をさぼっていた。構内でも変化はみられた。先生が怒ったのだ。 「また白木はサボりか!いい加減にしないと落第させるぞ!」 「俺が見てきます」 「お前もサボる気じゃないだろうな?」 先生は疑うこともするようになった。俺は、変化がこんなに謙虚に出たことに嬉しくもあり、戸惑いもあった。 「まさか、自主学習するだけですよ」 「一緒だろ!早く連れ戻してきなさい」 俺は、だらけた返事を一言返すと教室から飛び出し屋上へと向かった。相変わらず、廊下は静かだ。変わるところもあれば、変わらないところもある。 「そろそろ先生から呼び出し食らうぞー。サボり魔」 「煩い、堅物」 「もう、堅物じゃないと思うんだけど…」 「それでも堅物は堅物なの」 言葉のキャッチボールを二往復ほどすると、白木さんは起き上がり俺と向かい合った。 「ねぇ、いい加減白木さんって呼ぶの、やめてくれない?美穂って呼んだり、どっちかにしてよ」 俺の目を見たと思えばすぐに、怒りの表情を表した。俺は、顔をポリと手で掻きどう呼べばいいか暫くの間悩んだ。美穂とよんだ時は無意識で呼んでいた為に、普段から白木さんといい慣れているのもあり、白木さんと呼ぶのが当たり前になっていた。 「美穂って呼べばいいってこと?」 「う…うん」 少し照れたように、俺から顔を逸らす。 「美穂…」 「いきなり呼ばないでよ!恥ずかしいわね」 しんみりした空気のなか、名前一言言ってしまったので、俺だけじゃなく白木さんも顔を真っ赤にした。俺の顔も赤くなっているに違いない。 「だけど、そっちの方が断然いい!」 そう言うと、美穂は無邪気な表情を浮かべて万遍な笑みを浮かべた。俺もつられて笑う。 空には無限に広がる海と同じくらいに青い空と、白い雲が絵のように美しく浮かんでいた。風が吹き、葉が揺れる。 美穂は、フェンスから町を見下ろす。俺が同じようにフェンスから町を眺めると、嬉しそうな声が耳に届く。 「こんな日がこれから毎日続くんだね」 「あぁ、そうだよ。今はまだ善悪判断遺伝子を執拗に気にする人が多くいるかもしれない。けれど、これから先きっと居なくなるって俺は信じてる」 満開の桜が風に揺られ散っていく。それがまるで、喜びに満ちた世界のようで俺も嬉しくなった。 空を見上げれば、青い空が続いていく。この空の下で俺たちは確実に近づく幸せの足音を今か今かと待っている。
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