12.エピローグ

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「失礼な人」 「すまない、相変わらず君はお節介だなと思ってさ」 ムッと不貞腐れ、俺を睨みつける。けれど、今となっては可愛いしぐさとしか思えない。 「なぁ、美穂。本当にこれでよかった?白木姓じゃなく、竹沢になったのを後悔はしていない?」 俺は美穂を後ろから抱き締めて、耳元で囁くように尋ねる。すると、白木さんはフフと笑い体を俺の方に向け直す。 「馬鹿ね。どうして後悔するのよ。貴方と一緒に生きることを決めたのはあたしよ? それに、白木は仮の苗字だもの。気にしないでいいのよ」 俺にそっと触れるだけのキスをしてきた。めったにないことだからか、俺は驚きを隠せず唖然としてしまった。 「そんなこと考えてたのね。もう決めたことなんだから、戻ったりはしないわ。 あたしは昔から前をすすむ女よ」 フフと、また笑う。その笑顔が、彼女と付き合うにつれて変化していた事を知っているのは多分俺だけだと思うと優越感に陥る。 「そうだったね」 俺の腕から逃れると、美穂は威張るように胸を張った。そんなとき、大きくなったお腹の方が目立つ。 「お腹目立つようになってきたな」 「もうすぐだからね」 俺と美穂の子供だから、きっと玉のように可愛い子供が生まれるぞ、とふざけて言ってみた。すると美穂は、当たり前じゃないと平然として言ってくる。 「可愛いに決まっているじゃない」 美穂は上機嫌になって、お腹を擦る。 「あ、今蹴ったよ」 お腹を擦っている最中に、子供がお腹を蹴ったことが嬉しかったのか、目を細めて俺に報告してきた。俺も実際に触れて、暫くするとお腹を蹴ったことがわかった。 「ほんとだ」 俺も元気のいい子供だとわかり、嬉しさを隠せない。美穂と向かい合いはにかむと、美穂も同じようにはにかんだ。 「美穂、この子たちの名前を考えたんだ。聞いてくれないか?」 「うん?」 彼女の肩に手を回し、ゆっくりと歩幅を合わせ俺の部屋から出ていく。 開いた窓から再び風が吹き込み悪戯に本のページをめくっていく。 ―善悪判断遺伝子を作り出した科学者は、よかれと思って作り出した。この遺伝子によって、世界が平和になると思ったのだ。 しかし、私は思う。人が人で無くなったのではないかと。そして又、この世界に感情というものが完全なものではなくなったのではないかと…― そっと風で桜が揺れた。桜の花びらが、空を踊るように舞う。天へと昇る花弁は、青色の空をバックにとてもきれいだ。 今日も変わらず、空は青い。きっとこの先も、空の青さは変わらない。それと同じように、人も変わらず生きていくだろう。 END
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