アナタハドッチ

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20XX年、ある科学者は善悪判断遺伝子を作り上げた。それはそれは画期的な発明だといい、日本国中でも話題になった。 そのニュースは、瞬く間に世界各国にまで広がり、世界各国のテレビ番組で流され国際的な機関でも大きく取り上げられた。 そして、世界各国で政府は、この遺伝子を人々に取り込ませることを命じた。 今生きている人だけで無く、今後生まれて来る子供達にも善悪遺伝子に反応するよう作られた。 そしてみんな口を揃えて言う。 『これで世界は平和になる。誰を信じていいか、誰を頼っていいかわかるようになる』 しかし皆、自分がどちらであるのか知らなかった。 他人が口を出してはいけなかった。 それが仇となってか、人々は自分以外、自分の家族以外の額の文字だけで行動するようになった。 それを把握した思想家たちはよかれと思い、反善悪判断遺伝子団体を立ち上げ、科学者を追い詰めていった。 額に浮き出る善悪の表示。よかれと思って作り上げた科学者だったが、当時の人々が不満を爆発させ、自殺へと追い込まれた。 取り除く遺伝子を作ろうと優秀な科学者達が名乗りをあげたが、誰も忌ま忌ましい遺伝子を消す遺伝子を作り上げることは出来なかった。 それから、100年が経過した日のことである。 真実を知るものが誰もいなくなり、もはや口伝えの伝説になりかけていた。
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