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じいちゃんとは、他にも色々喋ってはいた。けれど、これくらい鮮明に覚えている事柄は、多くない。むしろ、こんなにもはっきりとした記憶があるのは珍しいくらいだった。
それから何年か経って、じいちゃんは上手く動くことができなくなったらしい。しまいには、寝たきりの生活に変わってしまったと、父ちゃんが言ってた。
俺は父ちゃんたちから、じいちゃんの部屋に入らないように深く念を押された。俺は、深く頷いた。そしたら、父ちゃんが一言言った。
『ごめんな』
と……。
俺は、理解できないで『大丈夫だよ』と返答したんだ。そしたら父ちゃんは、俺を強く抱きしめた。父ちゃんの表情が読み取れなかったけれど、父ちゃんのすすり泣いていていた声を俺の耳がちゃんと聞いていた。
いつしか父ちゃんや母ちゃんは、介護のために仕事を休むようになっていた。俺が学校から帰ってドアを開ければ疲れ切った表情の二人がソファに腰かけていた。
そんな中、じいちゃんは、俺の家からいなくなった。父ちゃんは、言っていた。
『じいちゃんは、老人ホームに行ったんだ。俺は止めたんだがね、これ以上迷惑をかけられないってね。真人には、悲しいことだろうが…仕方ないことなんだよ』
その後のじいちゃんの記憶は、俺の中に存在しない…。
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