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健児が村に到着したのは、既に日も落ちてしばらく後だった。
街灯もまばらで、各家と家との間も広い。そのせいで、時刻以上に辺りは暗かった。もちろん見渡せる範囲には人影すら無い。
「旅館なんて・・・ないよね。ちょっと甘かったなぁ」
予定では日が暮れるまでに村に到着し、上手くいけば何処かに泊めてもらえるか、最悪でも寒気をしのげる場所を貸してもらえるだろうと思っていた。しかしながら到着までの時間の見積もりが甘かったせいで、本当に野宿するしかなくなってしまった。
「ま、それもまた良・・・くはないが、仕方ない」
諦めて何処か適当な場所を探そうと歩きだした時、背後に凍りつく様な殺気を感じて、慌てて振り向いた。
「貴方・・・よそ者?」
振り向いた健児の目の前に、10才くらいの女の子が立っていた。
「?」
今は感じないが、この小さな少女が先ほどの震えるような殺気を放ったのだろうか?
健児は異様な違和感に戸惑ったが、せっかく村人に出会えたチャンスを逃したくない一心で、その違和感を振り切った。
「うん。ここは鬼哭村だよね。僕は民俗学の研究で、この村に伝わる神隠し伝説を調べに来たんだ」
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