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「あら、お客様?」
まず現れたのは若い女性だった。健児はその女性を見た途端に赤面する。年齢は彼と同じか少し上くらい。そして男性ならば、目が合っただけで赤面する様な可憐な容姿を持っていた。
「あ、あの・・・初めまして」
棒立ちのままの健児に向かって、沙耶は鋭い視線を向ける。
「貴方、ひざまづきなさい」
「フフ。そのままで結構ですよ。沙耶も立ち上がって」
健児がどうして良いかわからずオロオロしていると、女性は優しく沙耶を制してくれた。
「初めまして。私は当家の執事をしております、彾と申します。すぐに当主が参りますので、しばらくお待ち下さい。
それにしても貴方・・・いえ、失礼。何でもありませんわ」
緊張して落ち着きのない健児と対照的に、彾と名乗った女性は淡々としていながら優雅な雰囲気も醸し出していた。スタイルの良さも相まって黒っぽいスーツも良く似合っている。
彾の言葉通り間も無く、奥の扉より大柄な男性が現れた。年齢は50代半ばくらい、眉間のシワは縦に深く刻まれ、威厳に満ち溢れた眼差しを持っていた。
「ほう。よそ者が来たのか。久しいな」
大柄な男性は見た目より更に威厳のある低い声でそう言うと、健児をジロリと見下した。健児は、男性の放つ圧倒的な威圧感に思わず身構えそうになる自分を何とか堪え、短く会釈した。
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