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「ワハハハハ!」
自分に対して警戒心を剥き出しにしている健児を見て、男性は豪快に笑った。
「いや。そんなに警戒しないでくれたまえ。久しぶりの若い来訪者だったので、からかってみたくなった。気を悪くしないでれ。
私は木藤家当主、木藤 十三だ。代々この村の地主であるので、皆からは親方様などと呼ばれているがね。
君のことも少し教えてもらえるかな」
非礼の詫びに十三は先に自分の名と身分を明かしたのだろう。豪快ではあるがその節度のある姿勢に、健児も誠意を示した。
「名乗るのが遅くなって申し訳ありません。
僕は神山 健児と言います。大学の3回生で民俗学を専攻しています。この鬼哭村には、この地方に伝わる神隠し伝説を調べにやって来ました。
2、3日になるかと思いますが、こちらに滞在する許可を頂けますでしょうか」
「うむ。
君の言葉には嘘がない。私は嘘か誠か見分ける能力があるからね。
それに誠実な気性の持ち主らしい。私は気に入ったよ。
沙耶、村の者達に協力するように伝えておいてくれ。寝食は彾に世話になるといい。
一方的に話して申し訳ないが、私も忙しい身でね。
これで失礼させていただく」
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