お義母さまと私

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 マジ卍なんて誰も使ってない。プロレス技と間違えているような気もするが、菊枝はニコニコと微笑んだ。 『ええ、とってもトレンディですよ~』  遥子の言うトレンディとは何なのかは分からないが、そういう事にしておいた。後で、編集者が何とかするだろう。 『菊枝さん、あたし、中学生向けのレーベルで胸キュン学園小説を書こうと思うの。学校図書館の数はたくさんあるし、若いファンを獲得したいわ』  三年前、遥子は知り合いの古参の編集者に打診した。けれども、令和のリアルな恋愛など描ける訳がない。 『あら、今の子は社会の窓って言わないの? タブレットを使う授業なんて分からないわ。ブルマーって、今の子は穿かないの? それじゃ、何を着て体育をするの?』  こんな調子なので苦肉の策として大正時代の女子高校生を主役にして書くことになったようである。それが、見事にヒットした事は喜ばしいのだが、遥子は、いちいち菊枝に本の感想を求めてくる。
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