お義母さまと私

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 うっせぇ。うっせぇわ。  菊枝は専業主婦として手抜きはしない。家族全員のシーツや枕を週に一度は必ず洗濯している。煌びやかな応接間のシャンデリアの掃除も一人でやっている。遥子の靴にカビが生えないのも、菊枝が脱臭剤をまめに交換したり、専用のクリームで靴を磨いたりしているおかげ。  五十肩になり、こんなにも苦しいというのに階段や廊下に掃除機をかけている。我ながら何て健気で頑張り屋さんなのだろう。  半年前に待望のルンバ君を買っているが、その翌日に遥子がルンバ君を見て顔を引き攣らせて叫んだ。あたかも、油ぎった巨大なゴキブリと遭遇したかのような大仰な声だった。 『何なの! 危ないじゃないの! 躓きそうになったわよ。転んで骨折したらどうするのよ。これ、隅っこまで掃除できてるのかしら?』 『もちろん、やっていますよ』  宇宙工学に基づいて作られており驚くほどに高性能なのだと説明しても、遥子は菊枝にルンバを使うなと言い張りやがった。 『菊枝さーん。ロボットなんかに頼ったら駄目よ。楽する事を覚えると堕落しちゃうわよ。あなた顔はいまいちだけどスタイルだけはいいのよ。自分でやりなさいよ。ダイエットになるわよ』  うっせぇ。ちょっとは嫁を休ませろよ!  しかし、長男の嫁である菊枝が、そのような暴言を姑に吐ける訳がない。    菊枝は夫よりも二歳年上。しかも、不美人。そんな菊枝を選んだ事を不思議に思った若い女性社員が尋ねたことがある。
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