先輩─ひとこと言ってもいいですか?

5/11
前へ
/11ページ
次へ
――――― 「なぁ(むつみ)……お前、なんかやつれてない?」 「へ? そ~ぉ……?」 練習場のベンチの上で体育座りして、背中を丸めながらちびちびとコーヒーを啜る俺に、大学の友達が苦笑いで話し掛けてくる。 あれから3日。 響が、電話に出てくれない。 それどころから、メッセージも既読スルー。 一言「あれは俺のじゃない! 俺は見てない!」って、言いたいだけなのに…… あぁ、胃が痛い。 ブラックなんて止めときゃよかった。 そうだ、ホットイチゴミルクが飲みたい。甘っっ々の甘ったるいやつ! ……はぁ。 今の俺、身も心も、糖分が足りない。 本当なら、今夜は響を誘って、年越し初詣でも行こうかと思ってたのに。 悲しいかな、大晦日の夜に男だらけのサッカーサークルでオールナイト試合中…… 「つうか、睦の彼女もさ、AV見つけたくらいで大袈裟じゃねぇ? 男なら誰でも持ってるっしょ」 「響はそーゆーの免疫ないんだよ。俺が初彼氏らしいし……多分、めちゃめちゃショックだったんだと思う」 友達にそう返しながら、自分が情けなくなってくる。 いくらアレが俺のじゃ無かったとしても、 いくらアレが男たるもの一度は目にするものだとしても。 純粋無垢な汚れなき響に、俺はなんてもんを…… ―――響、怒ってる? それとも…………俺に幻滅した? やばい、マジで気持ちが落ちてくる。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

230人が本棚に入れています
本棚に追加