先輩─ひとこと言ってもいいですか?

10/11
前へ
/11ページ
次へ
響……それ、絶対友達にからかわれてるって、と思いつつも、不安そうに俺を見上げてくる表情を見たら、そんなこと絶対言えない。 それよりも、目の前に置かれたこの据え膳状況をどうにかしなければ。 なんせ、俺達、未だに清いお付き合いなんですよ。 ビックリでしょ?……ねぇ? だってほら、響は、全部ハジメテなので……ねぇ? だけどいい加減、俺の中のもう一人の俺が、“今男にならなかったらいつなんの?”と背中を蹴ってくる。 付き合ってこの一年半で鍛え抜かれた強靭な理性も、完全に白旗を掲げてる。 タイミングを見計らったかのように、遠くのお寺から除夜の鐘が鳴り響き始めた。 俺のこの煩悩をどうにかしろってか? 言っとくけど、108じゃ到底おさまんないよ? 俺は響に一歩近づいて、そのイマイチしっくりきてない女教師風の眼鏡を、額の方へ押し上げた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

232人が本棚に入れています
本棚に追加