バンド!

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「遅れましたー」 練習時間過ぎてますけど。 「トラくん。なんで遅刻?」 「普通に受け付けの仕事やってたんすよー。今ライブやってんでー忙しかったんすよね」 「そーでしたねー」 こいつはトラ。斎藤(さいとう)というが、トラと呼べと言い張る。虎ニ(とらじろう)という名前が嫌いなのか? ちなみに高校の軽音部からの仲だか、尚兎と同じ年だから俺より年下。 髪にメッシュの赤がかのこと一緒で、すげー嫌なんですけど、トラ自身は気に入ってしまっている。 「トラ、お前さー尚兎と今度バンドやるからさーそんとき組もうよ」 「え、柴田(しばた)。あいつ、苦手だからいいです」 「トラ、逃げる気か!」 「柴田とか、わがまますぎるから無理っす」 「慣れろ!」 「綾がやれよ!」 トラの無茶振りだ。 「いいですけど」 即答した綾。まったく。 「バーカ!綾。ベースお前できねーだろ!」 「あ、そうでした」 天然なのか、綾よ。 「じゃ、早川(はやかわ)誘ってみたらどーっすか?」 めちゃくちゃ面倒臭そうに答えるトラ。 「そーだなぁ。でも、あいつもベース弾けたかな?あーギターはいるんだよなぁ。しかも早川まだ来てねーし」 「大学エンジョイしてんすかね〜?」 「そーいや、サークル入ってるとか言ってたなぁ」 「それが、昆虫サークルって言ってたんすけど、やべー趣味っすよね」 「早川は理学部だろ?そーゆーの研究するんじゃね?」 「俺知らねーんですけど」 「遅れました」 噂をすれば早川じゃないか!白い髪(マッシュルームのような)にピンクのメッシュな髪型。のくせに、ちゃっかり大学に行っている若者。 「早川〜遅刻とかーやめてくんない?もうすぐライブっしょ?」 「憲緒さん、すみません。どうしても落とせない授業があって」 「へー?よくわかんねーけど大変だな」 早川は頭がいい大学に行っている。 俺の頭なんかやばいことがすぐにばれてしまうので、あまり込み入ったことは聞かないことにしている。 「じゃあ、早川さんも揃ったことだし、早速やりましょう!」 「おー綾!やる気あるねー!いいよいいよー」 「はい!ありますよ」 セッション開始。 それなりに仕上がってきたじゃあないか。 「いいぞー、休憩するか」 「うーっす」 トラは即退室。タバコでも吸うんすか? まったく、早川もかよ。 綾は能天気にギター弾いてる。 自由気ままなバンドだなぁ、おい。
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