斎藤虎二郎

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斎藤虎二郎

今、メンバーじゃないのに、柴田がいる。 「チケット取ってきたぞー!先輩に金取られたし〜尚兎(たかと)金出せ〜」 憲緒さんは柴田にぱしられている。 「金ならやる。てゆーか憲緒、バンドはどーなったわけ?」 「あー、それね?うーん、ベースがまだ決まらなくてねぇ」 この柴田は、厄介だ。 中、高と同じだったけど、軽音部にイヤイヤ入って憲緒さんをバカにしていた。 しかし、歌は上手い。だが性格は悪い。 同級生で、なんでもできる(ひいらぎ)の友達だから、めちゃくちゃモテていた。性格が悪いのに。 柊は友達のことは苗字でほとんど呼んでいた。ので、俺も斎藤と呼ばれていた。 その真似なのか、柴田も俺のことを斎藤と呼ぶ。 バンドのときも斎藤って…。 俺は、「トラ」で通してるんだけど? 中学のとき、トラって呼んでくれ!って言ったのに。…無視かよ。 「斎藤、お前ベースやれよ」 一方的に要求する。無茶苦茶なやつだ。 「俺は上手くないし、他のやつに頼めよ」 「そーする。じゃー憲緒がやれ。ドラム叩きながら」 「いや、できないしー。うーん、しゃーない、他の奴に頼もう」 「てゆーかさぁ、俺もう帰るよ。んで練習できないんすけど!もー明日から来れないよ?俺?」 「え?そーなのか?」 「うん、仕事。で?マジでバンドすんの?」 「まじだし。組み込んじゃったしー。じゃあ、一発本番な。で、曲はお前の好きなのやったげるからな」 「お、いいねー!」 柴田はほんと迷惑だ。 俺たちのバンド練習邪魔してるし。で?自分は練習なしに出るってか?ふざけすぎ。 だけど、盛り上がるからって憲緒さんがわざわざ組み込んだ。 むかつく。
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