なにを優先する?

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 今は新宿の東口、駅構内。14:28。  みんなが休みに入った年の瀬に、昔の同級生と“女子会”をする約束をしてここに来た。  待ち合わせの時間は14:30。  しかし予定しているメンバーは誰もいない。  携帯が小さなバッグの中で震え、連絡がきたことを示した。  指定位置にある携帯を取り、見ると「ごめーん、10分遅れるー!」というメッセージが表示されていた。  そういえば何年か前に集まったときも同じことがあった気がすると思い、連絡がきた画面を遡ってみる。  見事に、全く同じメッセージがあった。  あと10分ならもう少しだな。  付近を通る人は、無関心に目の前を通りすぎていく。  ……ちょっとここは人が多いな。どこか良い場所を探さないと。  みんなを見つけやすいようにと思って改札の前にいたけれど、前から来る流れで早くも疲れてしまいそうだ。  安全地帯を求めて歩き出す。  今日来るのは私を含めて4人だから、ある程度のスペースがないと困るよな。  ミキ、りほりん、みーこ。  友達の顔を思い浮かべる。  元気かな。  慣れない8センチのヒールを意識しだした頃、ロッカー横が空いているのを見つけた。  あそこでいい。  携帯のスイッチを入れると時刻は14:43。  もう来ているのだろうか。  壁に軽く背を預け、改札に目をやる。  大きな人の波が通った。  引いても見知った顔はいない。  第2波がくる。  さながらカメラで連写をしているような勢いで見ていると、明るめの茶髪のミキを見つけた。  入れ違いという面倒な事態を避けられたことに、少し安堵する。  続いてりほりんとみーこも出てきた。  手を挙げようか連絡して場所を知らせようかで迷っていると、3人ではないことに気付く。  ……4人いる。  そのまま凝視していると、向こうがこっちに気付いた。  手を前に出して磁石のように寄ってくる ミキ。  手を軽く振って目を可愛く見開いている りほりん。  細目でにこにこして話しながら歩く みーこ。  それと、黒髪姫ロング。 「やっばい久しぶりじゃーん!」 「相変わらず紗奈ちゃんは早いよねー」  みんなが遅すぎるだけでは? 疑問を飲み込む。 「こうして集まれてよかったよー」 「そうだよね、本当によかった」  ねー、と適当に返事をするが、今は顔に笑顔を塗ることに必死だ。   集合するのは全部で4人だったはず。  今ここにいるのは、5人だ。  自然に会話に入って、姫ロングはこのグループに溶け込んでいる。まるで昔からの同級生のようだが、私にそんな記憶はない。  友達の顔を慎重に、あくまでも自然に見回す。みんな笑顔でこの後の行き先を決めていた。  違和感を感じているのは、私だけ?  空っぽの相槌を打っているだけで話は進み、行き先はカラオケになっていた。  現在一緒に歩き出している人数は、5人。  あなたは誰。  脳がその言葉を発しても、心臓が感情で制御する。口から出るのは空虚ばかりだ。  ついに私は、半ば強引に決心した。  友達との関係を壊しかねない、手元にある着火済みの爆弾。  その火を、丁寧に、揉み消した。
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