am 7:30

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 大手(おおて)商事、企画室。  am 7:30――始業1時間半前。  今日は、午後からお得意様の会社へプレゼンに行く。  資料の最終チェックをしたいので、珍しく早起きして家を出た。スマホの目覚まし(アラーム)を6時にセットしたつもりが、5時なっていたことに気付かず、慌てて電車に飛び乗って――いつもと違うガラガラの車内に、呆然とした。  誰もいない職場の自分の席で、コンビニおにぎりを囓りながら、ムダに早く出社してしまったことを恨めしく思っていたが、これは神様の啓示だったのかもしれない。もしくは、神様が仕組んだイタズラか――。 「おっ? 美原(みはら)さん、おはようさん」 「あ、おはようございます。……鶴見(つるみ)課長、お早い……ですね」  入室して来たのは、この部署のボスであり、私の上司だ。  手元の書類から顔を上げた私は、震える心臓を抑え、何とか「にこやか」に挨拶を返した。  何故なら――。 「今日は、随分早いねぇ」  鶴見課長の頭髪(ダミー)が、微妙にズレているのだ。
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