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pm 15:30
「お待たせしましたぁ」
ユミちゃんがコーヒー、私が紅茶の入ったカップを乗せたトレイを持って、企画室に入る。
「いやー、今日は大変な日だったね、ナナちゃん」
藤澤君が、率先して飲み物を配ってくれる。
「いいえ、皆さんが応援してくださったお陰ですよぉ。それに皆さんの方が、電車大変だったじゃないですか」
同僚達の机の上には、それぞれ好みの飲み物とスイーツが並ぶ。もちろん、課長の机の上にも。
「課長は?」
「今、トイレ。すぐ戻るって」
私が買ってきたコンビニスイーツは、皆の午後のオヤツとなり、特別にオヤツタイムが設けられた――課長の提案で。
「なんだ、待ってなくても良かったのに」
ドアが開き、鶴見課長が現れた。コンビニのネクタイを締め、頭は一糸……もとい、一髪の乱れなく綺麗に乗っている。カツラが。
「いやいや、課長の奢りじゃないですか。一緒に食べましょうよ」
織田さんの言葉に頷き、それぞれの席で笑顔になる。
課長は、恥をかくことなく会議を終え、午後から私とプレゼンに出かけた。そのプレゼンの結果も上々で、先方の会社から企画にゴーサインをいただいた。
「これまで、気を遣わせて、すまなかったね」
課長は、私達をグルリと見回し、『別に話す必要がなかったから、話していなかっただけなんだよ』と屈託ない笑顔を見せた。
「今度からズレていたら、はっきり言ってくれていいからね」
被っている、イコール、触れちゃいけないこと――という考えは、私達の勝手な思い込みだったのだ。
「はーい」
「分かりましたー」
私は、鮮やかな緑色の枝豆ペーストが絡んだ白玉団子をパクリと頬張った。隣席のユミちゃんも、ティラミスを手に頬が溶けている。互いに顔を見合わせ、目尻を下げた。
ああ……幸せだなぁ。
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