20人が本棚に入れています
本棚に追加
am 7:30
大手商事、企画室。
am 7:30――始業1時間半前。
今日は、午後からお得意様の会社へプレゼンに行く。
資料の最終チェックをしたいので、珍しく早起きして家を出た。スマホの目覚ましを6時にセットしたつもりが、5時なっていたことに気付かず、慌てて電車に飛び乗って――いつもと違うガラガラの車内に、呆然とした。
誰もいない職場の自分の席で、コンビニおにぎりを囓りながら、ムダに早く出社してしまったことを恨めしく思っていたが、これは神様の啓示だったのかもしれない。もしくは、神様が仕組んだイタズラか――。
「おっ? 美原さん、おはようさん」
「あ、おはようございます。……鶴見課長、お早い……ですね」
入室して来たのは、この部署のボスであり、私の上司だ。
手元の書類から顔を上げた私は、震える心臓を抑え、何とか「にこやか」に挨拶を返した。
何故なら――。
「今日は、随分早いねぇ」
鶴見課長の頭髪が、微妙にズレているのだ。
最初のコメントを投稿しよう!