昔、どこかで

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昔、どこかで

 色んな商品を無人で販売できるのが、自動販売機――いわゆる自販機。 基本は缶・ペットボトルの飲料を売っているけど、菓子軽食類に卵や魚なんかを売ってる所もある。  昔は対面で買うのが少し躊躇われる様なものも売っていたが、ほんの一瞬だけ、極局所的に自販機にラインナップされていたものがある。  心霊写真だ。  通常の飲料ものより小さい真っ黒な直方体型の筐体に、「心霊写真あります」と赤字で書かれていた。値段は500円。  右下の投入口にお金を入れれば、コトンっと受け口に薄い半透明のビニール袋に入った3枚の写真が落ちてくる。  恐る恐る写真を取り出せば――  入っているのは、見たことある写真。  写っている風景も人物も下に刻まれた年月日も、確かに見覚えがある。  それは家族の誕生日パーティー、友達との夏祭り、自分の成人式の写真……  購入者に関する写真が出てくるのだ。  そして、その写真をよく見ると、必ずそこに居なかったはずの見ず知らずの他人が、とびきりの笑顔で写りこんでいる。 ……この自販機はものの数日で撤去されてしまい、どこが販売していたのかすらわからないままである。
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