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お葬式なんて母親の時以来で。私はフワフワと浮かびながら墓地に居た。
この数日は私の人生の中で一二を争うほどの目まぐるしさだった。
意外にも来てくれた人は皆んな泣いてくれていて、驚いた。
ジョンは私の兄として気丈に振る舞って式を仕切ってくれた。
ああ、ルビーったら。そんなに泣かないで。私は平気。もう痛くないわ。
死んでからこの瞬間まで、実はジョンと最も長く居た時間だったかもしれない。
あんな悲しみはマチルダの時で十分だと思ったのに。ごめんなさい。
「では、これより棺を埋めさせていただきます」
私の棺に砂がかけられる。
「ちょっと待ってもらえますか」
ジョンが制したものだから周りは驚いた顔をした。
「最後の、挨拶だけ」
そう言ってジョンは棺に近寄るとそっと表面を撫でた。
私はジョンの前に立ち、半透明の腕を伸ばし、その頬を撫でる。
ねえ、ジョン。言いたい事があるの。私はマチルダに負けるかもしれないけどね。
するとジョンは誰にも聞こえないほど小さな声で囁いた。
「ベラ、あの感情をどんな名前で呼べばよかったのか分からない。それは親愛のひとつだったのかもしれない。ずっと言いたかった言葉があるんだ」
ジョン。
「ベラ」
「「愛しているよ」」
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