Red lipstick

11/11
前へ
/11ページ
次へ
 お葬式なんて母親の時以来で。私はフワフワと浮かびながら墓地に居た。  この数日は私の人生の中で一二を争うほどの目まぐるしさだった。  意外にも来てくれた人は皆んな泣いてくれていて、驚いた。  ジョンは私の兄として気丈に振る舞って式を仕切ってくれた。  ああ、ルビーったら。そんなに泣かないで。私は平気。もう痛くないわ。  死んでからこの瞬間まで、実はジョンと最も長く居た時間だったかもしれない。  あんな悲しみはマチルダの時で十分だと思ったのに。ごめんなさい。 「では、これより棺を埋めさせていただきます」  私の棺に砂がかけられる。 「ちょっと待ってもらえますか」  ジョンが制したものだから周りは驚いた顔をした。 「最後の、挨拶だけ」  そう言ってジョンは棺に近寄るとそっと表面を撫でた。  私はジョンの前に立ち、半透明の腕を伸ばし、その頬を撫でる。  ねえ、ジョン。言いたい事があるの。私はマチルダに負けるかもしれないけどね。  するとジョンは誰にも聞こえないほど小さな声で囁いた。 「ベラ、あの感情をどんな名前で呼べばよかったのか分からない。それは親愛のひとつだったのかもしれない。ずっと言いたかった言葉があるんだ」  ジョン。 「ベラ」 「「愛しているよ」」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加