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「ベラ、今日も良かったよ」
「ありがとう」
私は舞台用のメイクを落しながら答える。鏡越しに映るのは平凡を絵に描いたような顔のオーナー、ジョンだ。
「君がうちに来てから沢山のお客が来るようになってありがたいな。全てのお客たちは君に夢中さ」
「そう、ですね」
「そうそう、お客さんからプレゼント。これ、ベラにって」
手渡された紅い小さな箱を開けるとメッセージカードと一粒パールのネックレスが入っていた。
「ベラへ いつも元気をありがとう」
「君に似合いそうだ。付けようか?」
「お願い」
私は長いブロンドの髪をまとめて上げた。ジョンは私の首に手を回し、ネックレスを通した。
「う……ん。意外と難しいな。ちょっと待って」
そう言いながらゴソゴソと私の後ろでネックレスの金具と格闘している。
ジョンの手の温度が、私の首に当たるたびに私の胸は張り裂けそうになる。
「……奥さんにネックレスをつけたりしなかったの?」
「マチルダに? そうだな。贈った事はあったけど彼女はあまりアクセサリーを付けなかったからな」
私が押し黙るとジョンは「出来た」と言った。
鏡を見ると胸元に綺麗なパールが輝いていた。
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