Red lipstick

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「落ち着いて。貴方達また喧嘩したんでしょう。喧嘩の原因は?」  ティッシュを手渡し、横に座らせると辛抱強く話を聞いていく。  するとルビーは徐々に落ち着きを取り戻し、三十分後の彼女はホッとした顔つきになった。 「ベラったら、すごいわ。いつもクールに問題を解決するんだから」 「役に立てて良かったわ」 「ベラは恋愛マスターね」 「そんな事ないわ」 「ねえ、彼氏はどんな人なの? ベラに釣り合う人となると完璧な人でしょうね」 「何よ、急に」 「いるんでしょう」 「いないって」 「嘘よ。そんなはず無いわ」  けれど私の表情を見たのだろう。ルビーは目を丸くした。 「でも、好きな人くらいいるでしょう?」 「好きな人?」 「私たちは恋するお年頃よ。ベラにだって気になる人、いるでしょう?」  私は彼を思い描く。 「十歳年上で、いつも落ち着いていて仕事が出来て誠実な人、かな。そして人を愛することの尊さを教えてくれたの」  ルビーは目を輝かせた。 「素敵! 貴女にピッタリね。十歳年上ってことは三十代ね。もう、そんな人が居るなら会ってみたいわ。オーナーと同世代くらいだろうけど似て非なるものね。あんな冴えない人がいる中そんなイケてる男がいるなんて。やっぱり世の中は広いわね」  思わず私は笑ってしまう。 「ねえ、ベラは若いのになんでそんなにいつも落ち着いていられるの? 人生経験が豊富なのかしら。私よりも心はずっと年上みたい」 「経験しなくて良いこともあるのよ」  私はティッシュを取り出しベラのマスカラをトントンと拭く。 「あら、その箱──」  ベラはティッシュ横にあった箱に気付いたようだった。  そしてベラの口から出た話に私は言葉を失った。
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