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「もしもし」
「ベラ、俺だ。ジョンだ」
「どうしたの。お店で何かあったの?」
「楽屋に化粧ポーチがあったんだけど君のじゃないかと思って」
私は慌てて鞄を探った。確かにポーチがない。
「そうみたい」
ため息を吐きながら答えると電話の相手は笑った。
「家に届けに行こうか?」
「いいわ。そこに置いておいて」
「でも、明日君は休みだろう。ここに置いてていいのか?」
「そう、ねえ」
少し動揺して言葉が宙に浮かび、なんと返事していいのか分からない。
「どうしたんだ、君らしくもない」
「そうよね。私らしくないわね」
オウム返しをしてふふ、と私は力なく笑った。
「大丈夫か?」
「えっ、何が?」
「声が、何となくね」
「……大丈夫。ねえ、やっぱりポーチを持ってきてもらえる? 私のお守りが入っているから」
ジョンは了解と言い電話を切った。
私は立ち上がるとキッチンへと向かった。
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