Red lipstick

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 一時間後、チャイムが鳴りドアを開けるとジョンが立っていた。 「いらっしゃい。上がって」 「ポーチを届けに来ただけだぞ?」 「話したいことがあるの」  不思議そうにジョンは部屋に上がった。そして驚いた顔をした。 「久しぶりに作ってみたの。マチルダ直伝のチリスープよ。今出来たところだから一緒に食べましょう」  私は二枚のスープ皿にそれを盛った。  ジョンは椅子に座り私のサーブを見ている。 「驚いたな。ベラが料理出来るなんて」 「これだけ作れるの。マチルダが何度も教えてくれたから」  お皿を並べて私も席につく。  ジョンがひとさじスープをすくい、ゆっくりと口に運んだ。 「どう?」 「美味しいよ、とっても。懐かしい味だ」 「良かった」  私もスープを飲む。 「マチルダが亡くなって一年か。まさかこの味の料理が食べられるとは」 「今でも愛してる?」 「もちろんだよ」 「なら、これを返すわ」  私はつけていたパールのネックレスを外してジョンに差し出した。 「なに言ってるんだ。お客から貰った物だろう」 「これ、ジョンが買った物でしょう。貴方が鞄からこの箱を出すところを見た人がいるの」 「それは……」 「貴方にとってマチルダはもう過去の人なの? ねえ、どうして嘘をついてまで私に贈り物をしたの。後ろめたくないなら答えて」  ジョンの顔は暗い。
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