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エレベーターにて
人間関係を和やかに保つには建前が必要だ。
例えば、男がエレベーターの中でエレベーターガールとずっと二人きりになったとする。
内心ブスだなあと思っていても、いやあ君、どことなく愛らしいところがあっていいねえなぞと男は心にもないことを言う必要に迫られる。
おまけに大根足を見ても脹脛の盛り上がり方がいいねえとか寸胴な腰を見てもくびれのカーブがいいねえとか団子鼻を見ても食べたくなるような丸味がいいねえとかごっつい手を見ても指の作りがいいねえとか濁声を聞いてもちょっとハスキーな感じがいいねえとか沢庵臭い体臭を嗅いでもそこはかとなく香って来る匂いがいいねえとか言って褒めなければならない破目になる。
しかし、ここまでよいしょする必要はない。自明のことだが、セクハラで訴えられ兼ねない。或いはエレベーターガールをその気にさせ、気があるのではと思わせてしまい、いづれにしても自分が困ることになる。
実際、面識のある器量の良くないエレベーターガールの貴子とエレベーターの中で二人きりになった時、義男は一階から3階まで上がる間に彼女を必要以上に煽てた所為で4階に上がった時、彼女に告白されてしまった。
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