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「それとか」
「おいおい、まだあるのかよ」
「ふふふ、そう、だからね、付け上がってないで身の程を考えなきゃ」
「と言うと?」
「だから好きと好意を一緒くたにするのよ」
「つ、つまり僕が君を好きになれってこと?」
「そう。そうすれば、お互い好きになるんだからそれが一番いいことだと思わない?」
「し、しかし・・・」
「お互い身の程を考えてさ」
「う~ん・・・」
「お互い今までに言えなかったことを吐き出せてすっきりしたことだし・・・ね」
「僕は本音と建前について触れただけで君のように身も蓋もなく露骨に吐き出せてないからすっきりどころが深く傷ついてしまったよ」
「ああ、ごめんなさい、でも私の言うことって一理も二理もあると思わない?」
「んーと、身の程を考えて好きと好意を一緒くたか・・・」
「そう。そうして私たちは一緒になるのよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ。話が急すぎるよ」
「ねえ、いいじゃな~い」
「そう迫られても・・・」
「ねえ、私、あなたに全部上げてもいい」
「い、いや、君ねえ・・・」
「ねえ!ねえ!」とこの後も貴子に迫られ続けた義男は、到頭観念した。
「ま、まあ、据え膳食わぬは男の恥と言うし、よし、分かった」
「ヤッホー!ヤッター!わあ!嬉しい!」
貴子が歓喜の声を上げ義男に抱き着くと、彼は女に抱きつかれた経験が皆無に等しいので満更でもなかった。
が、6階に上り、ドアが開いて乗り込んで来た男に貴子の抱擁を受ける自分を見られてしまうと、彼女の器量が悪い所為で気恥ずかしくなった。
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