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「あ、あー。まあどうしましょうか。特にこれといってやることもないので、事務所は開けておこうかと」
「ほあ~仕事熱心スね」
上野さんが感心してうなづいている。ちなみに上野クリニックはちゃんと休業されるそうだ。商売が順調なのは羨ましい。
「よかったらワタシと初詣でも?」
小森さんの提案は、早々に却下した。
何が悲しくて34歳のオッサンと50半ばのオッサンが並んで初詣に行かなくちゃいけないんだ。話的にもビジュアル的にもこの小説の人気が下降する未来しか見えない。
出来上がった雑炊をいただきながら、それぞれが来年の抱負に想いを告げる。
「来年は、もっと多くの方を救いたいっスね。1つ上野! 男を目指す自分としては、新年も信念もでっかくいきたいっスよ」
若いのに立派な目標をお持ちの上野大介さん。
「来年の目標? うんっ、新妻くんと釣りにいくことかな、うんっ」
なぜか釣りに固執する小森さん。だから、行かないですって。
「来年の目標ですか? ふふっ秘密です。あ、でも、事務所で猫を飼いたいです。黒猫がいいな。『くうたろう』って名付けるんです、どうですか所長?」
「なにそのオサレな名前。しかも探偵事務所で猫って……ねえ、大家さん?」
「アンタらが世話するなら、かまやしないよ。でもね、何か問題を起こしたら家賃倍にするよっ!」
飼うのはいいんかい。それはそうと、愛理はほんとに猫好きだからなあ。
そしてまだ、前野良輝が帰ってきていないけれど、まあいいか。
「僕はね、来年は──」
僕の来年の目標は、なぜかカットされた。なんで? 一応この話の主人公なんだよ?
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