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この時間帯なら、売り切れててもおかしくなかっただろうに。
「手間をかけて悪かったね」
素直に礼を言う。
「とんでもないです。これくらい」
前田は屈託のない笑顔で言った。
最初の印象がよくなかったせいか、嫌厭していたが(人混み狂騒曲・参照)言うほど悪い青年ではないかもしれないね。
「先生、ちょっとお話があるんですけど、いいですか?」
「うん?」
ここではなんですから。と言うから一緒に屋上に来た。
「先生と二人でこういうところに来ると、学生時代、屋上に呼び出して告白ってのを思い出しますね」
思い出さない。
学生時代はそんな、甘ずっぱい思い出は体験していないんだよ。
今ってLINEとかSNSで告白するもんじゃないのかな?(偏見)
「若いのに意外と古風だね。僕の世代なんかじゃ、そういう風習もあったみたいだけど」
「風習ってそんな、"ならわし"みたいに言わないで下さいよ」
ははっ。と前田……くんが笑う。これだけを見ていると、あどけなさの残る青年なんだけどねえ。
「それで話って?」
雪が積もってきているので普通に寒い。タバコをくわえて火をつける。
「先生とあらためて二人でいると……なんか、こう、ドキドキしますね」
「僕はどちらかとハラハラするね」
この話はヒューマンドラマであってBLではないので、それ以上は近づかないでもらおうか。
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