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「所長、私、今日は失礼します」
「ああ。家まで送ろうか?」
「大丈夫です。じゃあねくうたろう、所長を宜しくね」
よろしくされるのはどうやら僕のほうらしい。
「ニャ~ッ」
こらっ。返事をするなっ!
雪の夜道に消えていく愛理を見つめ、やや後悔が残る。
誘惑に負けて(?)愛理を泊めるべきだっただろうか。
だけどもし──もしも彼女と結ばれるのなら、酒の力を借りた状態ではなく、真摯な気持ちで向き合いたい。
「……さて、夜も遅いし、寝ようか、くうたろう」
「……」
フイっと無視された。うーんなんで僕だけ。名前が違うのかな? でも愛理が呼んだら返事してたし。
時間をかけて仲良くなろう。飼い主が見つかったらすぐお別れかもしれないけどさ。
「ごはん食べだのかな。カリカリとかキャットフードはないし……」
「ニャ~ッ」
カプッ!
足を噛まれた!
「いだーっ! こらっ! 僕は餌じゃない!」
ドタバタしながらも、夜は更けていく──
猫はどういうところで寝るのか分からないので、いつも仮眠に使うソファーに、くうたろうを手招きする。
「ここで丸まって寝なさい。僕はどこかその辺で寝るから」
地べたは冷たいので、ダンボールを敷いてみる。何だろう。路上にいる気分だ。
猫とはいえ女の子。これくらいなんてことないさ。
すでに丸まって寝てるし。
「おやすみ、くうたろう」
消灯。クリスマスの夜は猫と過ごすことになるとは思ってもみなかった。
……来年はいい年になるだろうか。様々なことを考えつつ、気付けば眠りに落ちていた。
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