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くうたろうの飼い主を探すこと。これからの生活、そして愛理のこと。様々なことを考える重圧のせいだろうか。胸が苦しい。
「はっ!」
目を覚ますと、くうたろうが僕のお腹の上で丸まって寝ていた。
「こらーっ!」
「フニャー!」
寝起き早々、バタバタ追いかけっこをする所長の図である。
事務所入り口、早々に出勤していた愛理の嫉妬と呆れの入り交じった、なんとも形容しがたい表情も含めお見せできなくて残念だ。
「おはようくうたろう♪ あ、所長も」
僕はオマケか。
「ニャ~♪」
くうたろうが愛理にすり寄っていった。
何この差。物語でも事務所でも、僕の居場所が狭くなっている気がするよ。
「……外は雪が積もっているようだね」
見れば町は一面の銀世界である。寒いわけだ。
「くうたろう、ご飯よ」
愛理がキャットフード的なものを買ってきてくれたようだ。
「僕の分は?」
「所長もキャットフード食べます?」
はは。分かっていたさ。
愛理入れてくれたコーヒーを飲みながら、今日も一日が始まる。
「……愛理……くん。その、昨日はクリスマスだというのに、何も、用意してなくて、悪かったね」
プレゼント的なものを失念していた自分を恥じる。
「……」
愛理は無言で、じっ。とこっちを見つめている。うーん怒っているのかな。今からでも何か買いに走ろうか──
「ちょっと出かけてこようかな」
立ち上がり、愛理とくうたろうに背を向けた時、首に『何か』を巻きつけられた。
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