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うっ!? まさか紐!? 働かない僕は『ヒモ』認定されて絞殺されるのだろうか!? などと、くだらないことを考えてたら
「その格好でお出かけですか? 風邪ひきますよ、所長」
真っ赤なマフラーが巻かれていた。
「……愛理、これ?」
「クリスマスプレゼントです。一応その……手編み……なんで……す」
一応、に続く声がごにょごにょ、愛理にしては歯切れが悪く、何だろうと頭の中で復唱し、遅れて心臓が高鳴った。
「あ、あ、ありがとう。うん、とってもあったかいよ。しかし僕は……」
何も返してあげられてない。と続ける前に、愛理はそっ。と白い髪留めを差し出した。
彼女の誕生日、12月20日にプレゼントしたものじゃないか。
「私は……ここにいられることが、何よりのプレゼントだと思っていますから」
外は雪が積もり、水たまりは凍り付く氷点下。だけど僕の心はとても暖かく満たされていた。
「ありがとう……愛理。来年も、そしてこれからも、宜しく頼むよ」
「雅さん」
そっと抱きしめると、愛理がそれに応えてくれる。
これからも、僕らの周りでは様々な事件や、不思議な出来事、そして多くの出会いがあるのだろう。
不思議な出来事は不思議な出会いをもたらし、困難を乗り越えることで、人は、僕たちは成長していける。
待ち受ける未来。それは光に溢れたものか、あるいは漆黒の闇かは分からない。
だけどさ。迷い困った人たちが、何かの縁を頼りに、この探偵事務所に来てくれるように。
大きな力ではないけれど、自分たちの力で誰かの『救い』になれたなら──
カプッ!
「いだぁ! またくうたろうに噛まれた!」
「あーっ! 所長、ズルい!」
いや羨ましがるところじゃないだろう!?
せっかくいい感じのモノローグに浸っていたのに。
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