新妻探偵失踪事件・後日談

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「邪魔するよ!」  突如として襲来した訪問者に、僕らは光の速さで離れた。  現れたのはこのビルの大家。奥村博美77歳。以上。  え? 説明が雑? 気のせいだよ。理由は察してほしい。 「……あ、あーこれはこれは。大家たん」  口が回らなくて噛んでしまった。 「なんだい大家たんって? それより急で悪かったね」 「いいえ、とんでもないです」  顔こそにこやかだが、愛理の背中から殺意が立ち上っているように見える。気のせい……だよねきっと。 「で、なんか用スか?」  僕もつい、火をつけずにタバコをくわえる。 「年末だというのにヤサぐれてんじゃないよ! 今日は何の日か分かってんのかい?」 「世間ではクリスマスっていうイベントらしいですね。大家さんもなんスか? ジングルベルでも歌いに来たんですか?」 「誰が『シングルヘル』だって!? 家賃倍にするよ!」  なんでやねん。 「それで、今日はどうされたんですか?」  一応、平静を装いつつ、愛理がお茶を運んできてくれた。 「用がないと来ちゃいけないのかい?」 「いやそんなことは……ありますけど」 「あるのかい! 家賃倍にするよっ!」  しまった! 心の声がだだもれだった! 「まあまあ、大家さん、所長はその……クリスマスだというのに誰にも相手にしてもらえなくて……えっと、スネているんです」  愛理の絶妙……というか微妙なフォロー。 「なんだいそうなのかい」  しかも納得する大家さん。そこは疑って欲しかった。 「そうなんです。ちょっと心が荒んでまして、どうもすいません」  場を収めるために頭を下げるが、クリスマスだというのに誰にも相手にされなくてスネてる34歳って、ただのアホじゃないか。 「なんだいなんだい、そんなことだと思ったよ」  そう思われていたらしい。納得されても困るんだけど。
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