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「さすが大家さんですね。そうなんですよ~、所長朝からずっとスネてて……」
愛理が フォロー(?)する。うーん帰りたい。
……ん?
「大家さん、さっきから気になっていましたが背中のそれ、なんですか?」
背負っておられる大きな風呂敷鼓を指さした。
「ああこれかい? ちょっとね」
これから冥途の旅立ちですか? と言いたいのをこらえて、次の言葉を待った。
「アンタらと鍋でもしようと思ってね。用意してきたのさね」
風呂敷に包まれていたのは、鍋と具材と、その他諸々のようだ。
「あ、あー、鍋ですか。なるほどー」
「ちょうど私たちも、鍋をしようと思ってて。ね、所長」(二人で鍋をしたいなぁ)
「そうなんです。いやー大家さん奇遇ですね」(だから帰ってくれませんかね?)
「ならちょうどよかったさね。ちょいと手伝っておくれよ」
「……はぁ」
心の声は届かなかった。
困惑とため息。とはいえ、具材は大家さんが用意してくれているので、それはそれでありがたい。感謝しよう。
2人じゃないのは残念だけど、どれどれ材料は、と。
風呂敷から肉とか野菜とか、魚を取り出すが、パッケージは全て無記名だ。
ちょっと待って。これどこで買ってきたの?
ダシに至ってボトルに、ひらがなで『だし』としか書いてない。
これ何のダシ? 大家さんの風呂の水じゃないよね?
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