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「なぁ、公男。
この世で一番怖いものって知っているか?」
僕は春樹君が急に言ってきた問いかけに答えることができず、逆に春樹君に訊き返していました。
「この世で一番怖いもの?
それって何なの?」
僕の頭に浮かんだ怖いものは、幽霊とか猛獣の類でしたが、春樹君の質問の答えがそんなであるとは思えませんでした。
僕は布団の中で真っ暗な天井を見つめながら、春樹君の言葉を待っていました。
「この世で一番怖いのは災害だよ。
俺はそれを近くで見ていた」
「それって、三年前にあったていう台風のこと?」
僕は母に聞いて、三年前の台風の被害のことを知っていました。
五十年に一度の災害といわれたその台風は、おばあちゃんたちが住む町を襲い、辺りは水浸しになったって……。
都会に住んでいた僕は、春樹君が言う自然災害を見たことが一度もありませんでした。
僕は災害の恐ろしさを想像の中でしか感じることができなかったのです。
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