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「うるさいわよ、日比野君」赤部女史は、自分の作る3度の飯より嫌いな彼のことを、また、いつものように、とあきれ顔で言う。ちなみに赤部女史は、研究室の先輩で、皆にアカネエと親しみを込めて、そう呼ばれている。
「そうだよ、蜘蛛の子を散らしたわけじゃないんだから。」
後輩の葉隠(はがくれ)さんにまで突っ込まれてしまった。
「後輩にバカにされて大丈夫なのか日比野~」
みんな、何もわかっちゃいない。日比野は、片方の手でこぶしを握り締め、誰にともなく訴えかけた。
「蜘蛛の子なんて、そんなものしか話題に上がらないのか!俺の今やっているナノアメーバの増殖速度と比べたら、大した問題じゃない!」
俺は、こぶしを机に叩きつけた。そして、その手が何かを壊したようだ。
「あーあ、またやっちゃった。」
残念というよりも、むしろ、呆れたように葉隠はため息をつく。
「蜘蛛の子は、ナノさんと比べりゃ狂暴ですからお気をつけて。」
研究室の実験は、また、ふりだしに戻った。
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