そういうシステムなのだ

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そういうシステムなのだ

 糸井(いとい)は高校1年生にして既に、人生に希望を見い出せなくなっていた。人間とは何と残酷な生き物なのだろう……。そして、世の中にはどうしてこんなにも理不尽なことばかりがゴロゴロと転がっているのだろう。路上に放置された犬の糞並に。  現に今日は、コンビニに行った帰りに犬の糞を豪快に踏んだ。後始末をしない飼い主に腹が立ったが、泣き寝入りするしかなかった。  昨日は席替えをしたが、4回連続で教卓の真ん前の席になった。席は担任である谷町(たにまち)先生の独断で決まる。けれども、糸井は決して席替え制度の見直しを要求することはしない。そんなことは通らない。それは百も承知だったから。たとえくじ引きだったとしても、もしかして同じ結果になっていたかもしれないとして、自分にくじ運がなかったのだと言いきかせ、諦めた。  そして、おとといのこと。現国の教科担任でもある谷町先生の板書の文字が間違っていた。本当は指摘したかった。「我輩は誤字である」と。が、当然ながらそれは控えた。「糸井は校正者でも目指しているのか? でも、残念ながらお前には無理だろうな」などと、嫌味を言われるだろうことが容易に想像できたからだ。
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