そういうシステムなのだ

2/4
前へ
/15ページ
次へ
 1週間前には、糸井がもっとも苦手とする、人気のある男子や先生に媚びを売るタイプの女子に「前から思ってたんだけど、糸井くんの顏って、ほら、ハロウィンの、ジャック・オ・ランタンに似てるよね」と、のびのびとした遠慮のない声で言われた。「あなたの顏は太鼓の達人のキャラの顏とは似ていないけれど、太鼓叩きの腕前は立派ですね」と、糸井は返したかったが、口をつぐんでいた。  1ヶ月前には、クラスメイトのICカードを盗んだのは糸井くんだと、濡れ衣を着せられた。彫刻刀を教室に忘れてしまったがために、美術室を抜け、教室に取りに戻ったという理由だけをもって。しかし糸井はそのときも、きっと自分はそういう役割を担うために生まれてきたのだ。そう解釈することによって、その場を乗り切った。ICカードは翌日、当人のロッカーの奥に追いやられていたのが判明したが、彼は糸井に謝りもせず、何事もなかったかのように、しれっとした顔をしていた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加