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戦乱の世とは言え、前線から遥かに離れた都は平和な物であった。
城下町ではその平穏を享受している奥様がたが平日昼頃、井戸の近くで世間話に華を咲かす。
「いやねぇ、ほんと……こうも雨が続くと洗濯物が乾かないわ」
奥様Aは空を仰ぎ溜め息を吐いた。
奥様B、奥様Cは自分の家の洗濯物が心配になった。
「そ、そうねぇ……それよりも、お宅のユウ君は元気かしら?」
奥様Bは動揺して話を変えた。
「ああ、あのバカ今頃何をしてるのかしらねぇ……まぁ、そんな事より洗濯物よ」
しかし、奥様Aには効果が無かった。
「後で畳めば良いじゃない……それよりも、お宅のサリーちゃんすっかり可愛くなったわねぇ」
奥様Cは奥様Bに話を振った。
「そうね……ほんと可愛くなっちゃって……もうお年頃よね」
奥様Aが食い付いた。
奥様Aの話を逸らす事に成功した。
奥様Bと奥様Cは100の経験値を手に入れた。
「そんな事無いわよ、まだまだ子供よ……ほんとお転婆で困っちゃうわ……この前も「私は武闘家になって魔王を倒す旅に出るんだ」なんて言ってたのよ……全く、武闘家になる前に家業の葡萄農家継ぎなさいっての」
奥様Bは溜め息を吐く。
奥様Bは25の心労値を手に入れた。
「あら良いじゃない、まだまだ若いんだもの、そう言う時期が来ただけよ~~……うちなんか、亭主が酒入るたんびに「今でこそしがない猟師をやってるが、本当は俺……王家直属の森林レンジャー隊なんだぜ」なんて調子の良い事ばかり……そんなの無いっつーの」
奥様Cのストレスが150上がった。
「それでもちゃんと仕事して家族を養ってるから良いじゃない……うちのユウなんか「俺は勇者だ、だから俺はいつか旅に出る」なんてほざいてばっかのニートよ……魔王退治の旅に出る前に家出ろって言いたいわね」
奥様Aの血圧が57上がった。
「ふん、うちの爺様はすっかりボケおって、自分の事を大魔法使いじゃと言っておったわい……お使いもまともに出来ん癖にの」
おばあちゃんAが現れた。
「まぁ、なんて言うのかしらね……お互いに苦労するわね」
奥様Aは同情を求めた。
「そうね」
「そうよね」
「そうじゃの」
奥様B、奥様C、おばあちゃんAは頷いた。
こうして午後の井戸端会議は終わりを告げた。
だが、奥様達はその会議の中でどうしても言えない、話題に出来ない事が有った。
……家族がマヂで魔王を倒す旅に出た事を……
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