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階段を降りていくと、階下から声が聞こえてきた。
「ねぇローラ。マッサージって何?」
砂鳥の声に、彼もまた己と同じ疑問を抱いたのだと理解し、火朽は吹き出しそうになった。
「ここは、ほら、肩に弱い霊を乗っけているせいで、肩こり頭痛に悩まされている連中が多い土地でもあるから、パンパンって俺が叩くと治るわけだ。それを、ウリに、な」
すると、ローラの楽しそうな声が響いてくる。
「資格とかあるの?」
「長生きしてるからな。大抵の資格はある」
「あ、そう」
二人の会話がそこで一段落したようだったので、火朽はあえて足音を立てて、階段の一番下まで降りた。本来、人型を形作っていても、足音などは出ない。こういった部分には、気を遣って過ごさなければならないのが、少し難点であると火朽は考えている。
「住居の準備が終わりましたよ」
火朽が声をかけると、二人の視線がそろって向いた。
「お疲れ様。じゃ、とりあえず飯にして、明日の開店からの打ち合わせをするか」
ローラがそう言ったので、全員で、住居スペースの一階へと移動する事になった。
向かった先は、ダイニングだ。
リビングとキッチンの間に、食事用のテーブルがある。
火朽はそれから、料理の準備にとりかかった。
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