ばあちゃんの煮豆

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長時間待たされてようやく火葬場から出た親族一同。こちらの気持ちなんか他所(よそ)に、空は気持ちよく晴れ渡っていた。 1月とは思えない、暖かな日だった。 「(てっ)ちゃん、泊まってく?」 叔母ちゃんが住んでいるのはこの近所だ。時刻は15時。このまま自分の(アパート)に帰ると、多分20時頃になる。 親族の葬儀があったばかりとはいえ、あまり仕事に穴を開けられない。もうすぐ30歳になる僕は、会社でそれなりに責任ある立場に就いている。 それに叔母ちゃんだってそんなに広くない家に四人暮らし。ばあちゃん()が近かっただけに、この度色々と大変だっただろう。きっと疲れているはずだ。 「このまま帰ります」 「そう。気をつけて帰りね」 「はい」 残念そうに眉尻を下げた表情の中に、ほっとした気持ちが滲んでいた。 「ゆっくり休んでください。ばあちゃんのこと、お疲れさま」 「哲ちゃんも、おばあちゃん子やったけん……寂しかろうけど」 僕は叔母ちゃんの気遣いに笑顔を浮かべたが、彼女と同じように、眉が「ハ」の字に下がってしまった気がした。
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