23人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
長時間待たされてようやく火葬場から出た親族一同。こちらの気持ちなんか他所に、空は気持ちよく晴れ渡っていた。
1月とは思えない、暖かな日だった。
「哲ちゃん、泊まってく?」
叔母ちゃんが住んでいるのはこの近所だ。時刻は15時。このまま自分の家に帰ると、多分20時頃になる。
親族の葬儀があったばかりとはいえ、あまり仕事に穴を開けられない。もうすぐ30歳になる僕は、会社でそれなりに責任ある立場に就いている。
それに叔母ちゃんだってそんなに広くない家に四人暮らし。ばあちゃん家が近かっただけに、この度色々と大変だっただろう。きっと疲れているはずだ。
「このまま帰ります」
「そう。気をつけて帰りね」
「はい」
残念そうに眉尻を下げた表情の中に、ほっとした気持ちが滲んでいた。
「ゆっくり休んでください。ばあちゃんのこと、お疲れさま」
「哲ちゃんも、おばあちゃん子やったけん……寂しかろうけど」
僕は叔母ちゃんの気遣いに笑顔を浮かべたが、彼女と同じように、眉が「ハ」の字に下がってしまった気がした。
最初のコメントを投稿しよう!