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(ミノムシの袋の中もこんなに暖かいのかなぁ~
うんん、カンガルーのお腹の袋のほうがもっと暖かいよ...
わたしはそんな事思いながら心地良い空間に浸っていて幸せな気分だったの。)
幸谷 仁
彼は山歩きが趣味で冬山も好きだった。
この日は彼女と標高666mの山を歩く予定だったが、
少し風邪気味だという事で彼女は峠の茶屋で待つ事にした。
10分程で山道入口の駐車場がありそこから往復1時間程の手頃な山歩きだ。
山頂から見る景色がいつ来ても何とも素晴らしく四季それぞれ何度も訪れていた。
雪はまだ積もってはいなかったが、吹く風は氷柱が刺さるように痛かった。
そして帰る途中(T-シャツ短パンのサララ)に出会ってしまったのだった。
気を失ったサララを抱きかかえると
まるで氷の塊を抱えているように感じた。
おまけに唇は紫色になり身体は震えているのか痙攣しているのか...
とにかく命の危機に瀕しているのだけは分かった。
彼は転がる様に山道を走りながら救急と警察に通報した。
車のエンジンをかけ助手席を倒し備えていた毛布で包み寝袋の中に押し込んだ。サララの顔は一向に血色が戻らず唇も紫色のままだった。
少しずつ車内が温まり始めたがサララの顔を触ると氷の様に冷たく青白いままだった。しかたないので寝袋を頭までスッポリと被せて足先や肩先腕を擦った。
それでも、サララは意識を取り戻さないままだった。
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