10人が本棚に入れています
本棚に追加
現場の駐車場にパトカーと救急車の2台が滑り込んだ。
刺激しないようにサイレンは鳴らさずゆっくりと近づいた。
幸谷は遅いよって顔で運転席から降りようとした。
パトカーから隊員がスルスルっと幸谷の乗る運転席に近づいて窓を下ろすように言った。
「幸谷さんで間違いありませんか?」
「そうですけど...
随分時間かかりましたね。
待ちくたびれました。」
「サララさんはどちらですか?」
「ここです。」
助手席の寝袋を指さした。
「じゃあ、両手を上げて車から出なさい。」
隊員が強い口調でドアを開けた。
「出なさいって、あなたに言われなくても降りますけど。
でも両手を上げてってその言い方は頂けないな!
何だか犯人みたいな扱いじゃないですか?
この娘、アイドルのサララさんですよ!
危うく遭難しかかってたんですから...」
その時すでに救急隊員は助手席のサララの顔を確認して確保した事を伝えていた。
「あんたフザケてんのか?!
これだけ状況証拠があるのにそんなシラをきるつもりか!
あんたの動き方一つで...
チョットでも間違っていたらもうこの世にはいなかっただろうな。
まあ生命があっただけでもありがたいと思う事だ。」
隊員はあっという間に後ろ手にして手錠をかけた。
「チョ...チョット待って下さい。
下の茶屋で彼女が待ってるんですよ。
さっき連絡した時はまだ具合が悪そうだったんで迎えに行かなきゃならないんです!」
幸谷は訳が分からないまま自由を奪われてしまった。
「そんなの分かってますよ。
こっちは!
あなたの会話は全て確認済みです。
その女性...小師 美矢さんでしたか...
もう署の方で取調べ中です。
心配いりません。」
「えっ!それって誰ですか?」
こうして何の罪もない可哀想な幸谷はいよいよ誘拐犯となった。
最初のコメントを投稿しよう!