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「で、首尾はどうなんだ?」
「うーん、いつも通りかな。」
と重厚なソファに似つかわしくないフランクな格好の男が座ってめんどくさそうに答える。その男の手には、商売道具のサバイバルナイフを弄んでいる。
「それどうにかならんかね。話してる時は落ち着かないんだが。」
「は?」
と言ってこの日初めて目を合わせてくるが、その目つきはかなり鋭い。
「まぁ、いい。金は予定通り振り込んでおいた。あとは、あんたの仕事次第だ。」
「なんでもいいけど。部下に頼みゃいいのに。」
「それができたら、大金なんぞ払わんわ。繋がりがバレても面倒だからな。」
「くくく。まぁ、こっちは金さえきちんと振り込んでくれれば、なんでもいい。」
ともう目線は合わすことなく話す。
「あんたはいつもそうなんか?」
「は?」
「だから、依頼の理由すら聞かんのか。」
動かしていた手を止めて、こちらを見据えてはっきりと話し出す。
「聞いて欲しいのか?」
「え、いや…。」
「くく。まぁ、大抵聞かないでも分かるさ。それに聞いたところで、何が変わるわけでもないしな。仕事をこなすだけさ。もう用はないのか?」
と冷たく言い放つ。
「悪かった。じゃあ、頼むぞ。」
と言うが特に答えは言わぬまま商売道具だけしっかりしまい、席を立つ。普通の動きだがほとんど音も立てぬまま部屋を後にして行く。
「得体の知れん男だ…。」
と呟きが、部屋に消えて行く。
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