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The beginning of the tragedy
1
「うっわー。それがこれで。あれがどれで。もう、何がなんだか分からねぇー。」
「いや、紘介。お前何言ってるんだかが一番わからねぇよ。」
と新が言うがいつものトゲは感じられない。それもそのはず。待望のクラブW杯。横浜マリノスvsリバプールの試合会場、日産スタジアムに来ていた。まだ試合まであと3時間もあるのだが、周りの熱気はもう既に最高潮なのではないかという盛り上がりをしてる。
結局久保田さんから一度だけ連絡があったが、俺らが駆けつけた時には時すでに遅く間に合うことができなかった。しかし今はそのことはほとんど考えないままでいた。
「やばいな。ここにいるだけで幸せだよ!」
「ふふふ。隆二はここにいるだけで満足か。俺の手には、ロッカールームまで見学できるプレミアムチケットがあるというのに。」
「今日ばかりは紘介さんに、頭は上がらないです。」
「苦しゅうない。」
「調子に乗るなっての。」
と新が紘介の頭を後ろからど突く。
「痛っ。なんだよー。今日くらいいいじゃん。」
「いや、紘介が調子に乗ってんのだけは許せないんだよ。」
「ひっでぇー。だが、今日は許す。」
「よし、紘介と不毛な会話してないで、グッズ買いに行こうぜ!」
と俺が言うと、
「そうだな。」
と新も乗ってくる。
「あ、グッズならあれ買おうぜ!」
と紘介は失礼なこと言われたのも忘れて、真っ先に歩き出す。俺と新は二人で顔を見合わせて苦笑いする。その後、置いてかれないように二人で追いかけて行く。
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