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ロッカールームの扉の前に辿り着くと、
「俺が開けてもいいか?」
と紘介が目を輝かせながら、振り向いて声をかけてくる。
「いいよ。早く開けてくれ。」
と少し呆れながらも促す。
「よし!いくぞ。ジャジャーン。」
と言って勢いよくドアを開ける。
紘介が勢いよく開けたため、部屋の中が一気に見える。そして飛び込んできた光景に絶句する。真っ赤に染まった一人の男性がロッカーを背に崩れ落ちている。明らかに一目で亡くなっているであろうことがわかる。そこに紘介が、
「あ…あれって園村じゃない?」
「え?」
改めて、倒れている男の顔を見ると確かに園村選手に似ていた。紘介が思わず駆け寄ろうとするので、新が
「待て。明らかにこれは事件だ。下手に踏み込まないほうがいい。」
「そうだな。とにかく誰かに知らせないと。」
と後ろを振り向くが、そこに係の女性の姿はなかった。
「あれっ。あの人は?」
と言って紘介は先ほどの曲がり角まで見に行くが姿はなかったよう。
「紘介、そのまま係員か警備員誰でもいいから探して連れてきてくれ。ただ気をつけて。あの女の人も明らかに怪しいし、まだ犯人が近くにいるかもしれない。」
と声をかける。
「分かった。隆二と新も気をつけろよ。」
と言って走り出す。
「隆二、これやばくないか?」
「新も気づいているか?」
「あぁ。どの形だろうとパニックを生むぞ。」
「これは確実に殺人事件だ。そして、試合開始前で何万人もいる会場。犯人がこの会場にいるなら、簡単に潜むことはできるし…。」
「仮にこのことが会場に知れ渡ればパニックで二次災害を生む。」
「だけど、狙いは分からないが言わなければ次の被害者が出るかも…。」
「くそっ。」
と言って新が頭を抱える。
「もう一つ、嫌な事実を言ってもいいか。」
「まだあるのか?」
「手口が首筋一閃だ。」
新が驚いてもう一度男の身体を直視する。そして、気づいたのか明らかに顔が強張っていった。
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