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メッセージ
1
「始まっちゃったね…。」
と紘介が会場の歓声を聞いて呟く。名残惜しい思いはもちろんあるが今はそれ以上に事件が気になって仕方なかった。俺らは何の為に第一発見者に仕立て上げられたのか。それを考えると共通点は一つしかなかった。
「理由があるとしたら…。」
と言って俺は園村の遺体に顔を向ける。
「そうだな。俺らが久保田さんの依頼を受けたことが考えられる共通点だよな。」
と新も同意する。それを聞いて紘介が、
「でも、それだけで俺らを?」
「いや、それにロッカールームチケットが当たったことは重なってるはずだが…。」
と言ってもう一度考え直す。すると、そこに橘刑事が戻ってくる。
「聞きたいことがある。その受付の女性は本当に12時30分と言ったのか?」
と聞いてくるので、こちらも警備員から聞いた時間の違いなどを伝える。
「そうなると、やっぱりその女性は何らかの事情は知っているな。」
と言って、改めて他の刑事に指示を出している。
「君たちにもう少し詳しいことを聞いていきたい。試合は観たいだろうが、人命がかかっている。協力してほしい。」
と頭を下げてくる。それを見て俺も慌てて、
「頭を上げてください。こちらは最初からそのつもりです。」
と言う。そこに紘介が加えて、
「なんてたって俺らDCですから。」
と胸を張って答える。
「DC?」
と橘刑事は首を傾げる。DCの説明と園村選手との関連を新が分かりやすく伝えてくれる。
「そんな繋がりがあったとは。借金か何か分からないが、誰かに自宅を友人とは思えない人達の訪問を受けてたってことか。」
「そうみたいです。」
と俺が答えるが、橘刑事はそのあとは何も言わず俺ら3人の顔をゆっくり見回していた。そして急に笑い出す。こちらが呆気に取られていると、
「すまん、すまん。君たちの組み合わせが面白いトリオだなと思って。」
「まぁ、こんな奴もいるんで、まとまりはないですね。」
と新が顎で紘介を示しながら答える。その言葉を聞いて誰のことかというように紘介はキョロキョロしてから自覚したのか、
「また、俺の悪口を言ったろ。」
「いや、個性があるって言ったんだ。」
と新が返す。一瞬紘介も考えるが、
「いや、絶対違うだろ。」
と答える。それに橘刑事はまた大笑いしてる。
「いやー、気に入った。君たちにはまだ詳しいことも聞かなきゃいけないこともあるし、本当に協力してもらおう。」
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