メッセージ

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 そして、橘刑事からもう一つ報告が入る。 「スタッフ登録されている中に、一人君達が言っていた特徴に合う人がいたんだが見てもらっていいか?」 「え、見つけたんですか?」 と紘介が思わず立ち上がって聞く。 「まぁ、履歴書だがな。」 と言ってコピーされた一枚の紙を渡してくる。そこには、「佐久間祥子」という人物のものだった。そこには、顔写真もあった。 「似てるけど、違うな。」 と新が呟く。 「確かに髪型は一緒だけど…。この人ではない気がします。」 「まぁ、そうだろうな。ここまで計画的にやってる奴だ。わざわざ証拠は残さないだろう。電話番号も全てデタラメだった。この顔写真もおそらく適当なのを貼ったんだろ。だが、この人物だけが、この会場から消えてる。今、この女に関する手がかりがないか探してるところだ。」 と橘刑事はまとめて伝えて、部屋を出て行く。 紘介は部屋をウロウロしながら呟いている。 「もう姿がないなら見つけられないよね…。」 それを片隅に聞きながら、橘刑事が置いていった履歴書のコピーを眺めていた。 「おい。新、紘介。これを見てくれ。」 と言って、履歴書の一点を指差す。二人の顔色が変わるのがわかった。 「これって俺らの大学じゃん。」 と紘介が驚いて言う。新も 「何でこんな必要が?」 と動揺した様子。 「偶然には思えないよな。」 履歴書の出身大学の欄に俺らが今通ってる大学名が書かれていたのだ。 「やっぱり俺らをわざと第一発見者に仕立てたってことか。」 と新が呟くと、更に驚いたように紘介が 「何で俺らなんだ?なんのために。」 「分からない。だけど、もしかしたら犯人は意外に俺らの近くにいるかもしれない…。」 そう二人に伝えるが、二人の反応を見ることはできなかった。丁度試合が動いたのか一際大歓声がスタジアムを包んでいた。
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