1.魔法少女になりたくて

2/14
前へ
/43ページ
次へ
たった今、親友に裏切られた。 場所は放課後の教室前。 中学三年生になって初めて友達が出来て、私は凄く嬉しかったのに。 放課後、忘れ物を取りに教室まで戻ってきた時だった。 教室の扉に手を掛けたとき、中から声が聞こえたんだ。 「響音(おとね)。あんな子と仲良くしてさ……また裏切る気でしょ? 名前は何て言ったっけ……。そう、(かなで)ちゃん?」 私の名前は奏。 内気で誰とも話さないような人間。 響音とは、さっき言った私の親友だ。 「裏切る? 奏を?」 「そうそう。小学生の時はあんたいつもそうやって裏切ってたじゃん。虐めっ子だったでしょ?」 「……」 頭が真っ白になった。 いつでも明るく声をかけてくれて、一緒に遊んだりした。 それなのに。 なんだ、それ。 「それにさ、あの子喋らないし暗いじゃん。そもそも響音アニメとか興味ないっしょ? あの子〝魔法少女〟とか好きみたいだけど。鞄にいっぱいつけてんじゃん」 毎週観る魔法少女のアニメについてよく話していた。 響音も観ているようで、いつも会話が弾んでいたのに。 それさえも偽りだったのだろうか。 私は扉にかけた手を静かに下ろした。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加